2016年11月28日月曜日

簡単な光通信機の製作

先日私の大学で学園祭があり、無線部も出展しました。
展示を行うにあたり、目に見えて分かりやすいちょっとした無線通信の実験ができないものかと思い、手持ちの部品をできるだけ使って光通信機を作ってみました。
それが思ったよりもウケたので、ここで紹介します。

普段は実用的な工作ばかりしていますが、今回の光通信機はあくまでも展示用なので特に実用性はありません。


さて、光通信機を作るにあたり、考えた仕様は以下の通りです。
1. 音声信号を光によって伝送するもの
2. 信号到達距離2m
3. AC アダプタを使った単電源で動作すること
4. 簡単に製作できて再現性が高いこと
5. できるだけ筆者の手持ちの部品で製作できること

以上の仕様を満たすものとして設計したのは下のような回路です。

手持ちの部品を活用することを最優先したので、一部の定数が最適化されていない気もしますがまあ良いでしょう。

パワーオペアンプ LM675T をノート PC用 の AC アダプタ(19V)で動作させ、その出力を LEDに送り込むというごく単純なものです。回路としては、単電源で動作するオーディオアンプとほぼ変わりありません。信号入力には、携帯音楽プレイヤーを使います。
LED には秋月電子で売られている 3W 赤色 LED の OSR5XNE3C1E を使用し、無信号時の電流が約 350mA(絶対最大定格の約 44%)となるように R6(上図)を設定しました。


こんな感じで、ケース無しのむき出しです。解説のため部員が常駐しているのでこれでも大丈夫ですが、ふつう展示するものはケースに入れるべきでしょうね。

これを作るために新たに買ったのはセメント抵抗1つと LED とレンズ(100円ショップで購入)だけで、のこりの部品は全て持っていたものを使いました。3WのLEDを使用し、さらにレンズまで付けているため光源を直視すると危険です。また、LED の電流制限抵抗とオペアンプはかなり発熱します。
電源電圧を下げれば発熱は抑えられますが、16V 以下にするとアンプ IC が動作しなくなってしまうので仕方がありません。

次は受信機です。
受光素子にはいろいろありますが、今回は送信側に使ったのと同じパワーLEDを採用しました。
送信側のLEDを飛ばしてしまったときのための予備として買っておいたものを使っただけで、特にこれでないといけないというわけではありません。
また、こちらにも100円ショップのレンズを装着しました。

このLEDと直列に適当なコンデンサを入れてDCをカットしてやれば、立派なオーディオ信号が出てきます。 そのままイヤホンを繋げば音が聞こえますが、スピーカーを鳴らすには適当なアンプを繋いでやる必要があります。学園祭での展示ではPC用のアクティブスピーカーを繋いでいました。もちろんHiFiではありませんが、まあAM放送程度の音質にはなっていました。

実は受信側に入れるためにALC付きのアンプ(SA2011というICを使った)を作ったのですが、これをつけるとレンズなど一切なくても送信機と受信機が同じ部屋の中にあるだけで音声を拾えてしまい、かえって光によって通信していることが分かりにくくなってしまうと思ったので外しました。SA2011アンプ無しでも、レンズのおかげで上に書いた仕様2を満たすことができます。

下の画像は展示の様子です。受信機の後方から送信機側を写したものです。



こんな単純なものなのですが、特に光を手でさえぎると音が聞こえなくなるのがおもしろかったようで(?)、一時は列ができるほど人気でした。

展示の本題であるアマチュア無線とは直接の関係が無い物ですが、これも一種の無線通信であり、この光通信機をきっかけに無線に興味を持った人がいれば幸いです。

2016年11月13日日曜日

実験用電源の修理(松定プレシジョン PLE-36-1.2)

大学の某研究室が捨てるというのでもらってきた実験用安定化電源。




松定プレシジョンのPLE-36-1.2という製品です。型番が示す通り最大36V1.2Aで、薄くて使いやすそうです。
しかし、捨てられるくらいですから当然壊れています。


電流ツマミを回しても定電圧モードに入らず上の画像の状態のままで使えません。電圧計は0.5~0.7Vを示しますが、テスターで測ってみるとなぜか負電圧が出ていました(+端子から-0.5V…)。

しばらく部室に放置していたのですが、この土日に家でじっくり見てみようと持ち帰りました。



中身は新品のようにキレイです。爆発したり焼き切れたりしたような部品があれば話が早いのですが。
さて、回路図も持ってませんし、どうしましょう。
どうしようもないようだったら、部品取り用にしようかと思っていました。大きなRコアトランスが魅力的です。

しかし本当に外見がおかしい部品がないか、もう少しじっくり見ていると…
ん?


このブリッジダイオード、えらく傾いていますね。
ちょっと指で押してみると動きました。これはいけない。
なんとこのブリッジダイオード、足が2本しか基板についていませんでした。浮いている2本を見たところ、ハンダが取れたのではなく今まで1度もハンダが付いたことがないようです。
基板にはハンダが付いている(自動ハンダ)ので、ハンダ面をざっと見たとき不良に気づきませんでした。
なぜこんな状態で電源が入ったんだ?と思いましたが、よく見るとこの不良部とは別に小さいブリッジダイオードが付いていました。デジタル電圧計等の電源は別系統だったんですね。

というわけで、早速直します。
ハンダを取って


ブリッジダイオードの足をさしこみハンダを付け直す。



これで無事に直りました。今後の実験に活用したいと思います。
下の画像は15Ωのセメント抵抗を繋いでテストしているところです。


…で、ここまであえてはっきりとは触れていなかったのですが、これは故障ではなくただの不良品ですね。おそらく最初は基板のランドとブリッジダイオードの足がなんとなく接触していて使えたものの、何かの拍子に接触がなくなってしまい廃棄にいたったということでしょう。

今までいろいろな製品の修理をしましたが、初期不良品に当たったのは初めてでした。