2017年6月3日土曜日

SHARPの1bitアンプで遊ぶ(2)

前の記事に続いて、1bitアンプです。
最終的にはジャンクミニコンポからアンプのモジュールだけ取り出し、別のケースに入れて動かしたいと思っています。その準備として今回はモジュールの定格などを調べます。

まずこのモジュールについていくつか簡単な測定をしてみた結果、以下のようなことが分かりました。
・ゲインは18dBくらい
・入力インピーダンスは2.8kΩくらい
・出力はBTL
・34V(非安定)、9V(安定)、5V(安定)の3種類の電源を使っている

電源が3種類必要ですが、いずれも正電源なので自作してもそんなに手間ではないでしょう。
基板のパターンを追ってみると、5Vは⊿Σ変調ICに、34Vは終段のICに使われているようでした。9Vはよく分かりません。
あとは…入力インピーダンスが少々低めなのが気になりますね。もともとミニコンポの中のプリアンプに接続して使うモジュールなのでそういう設定になっているのでしょうが。

測定が一通り済んだところでモジュールをミニコンポから外しました。


入力インピーダンスを上げられるかどうかと、出力のLPFの構成を知りたかったので基板のパターンを追ってみました。
入力部の回路
上の図はモジュールの信号入力端子から⊿Σ変調ICまでの回路ですが…入力インピーダンスが低めになっている原因は上の図のR1ですね。ここを大きくすればインピーダンスは上がりますが、ゲインも一緒に上がってしまうので注意が必要です(ゲインを上げたくなければR2も大きくする)。もう面倒なのでこのままでいいです…
あと、RV1(半固定抵抗)は出力のDCオフセット調整用です。


出力LPF
高周波のノイズをばら撒かないよう、出力にはLPFが付いています。L1とL2はフェライトビーズ、L3, L4, T1はトロイダルコイルです。インダクタンスは実測値です。
ここまで書いて気づきましたが、上の2つの回路図の部品番号は実際の基板に印刷されている番号とは違います。せっかくなので合わせておけばよかったですね。

実物はこんな感じです。

こちらはアップ画像。

ついでに電源電圧についてもちょっとテストしてみましょう。
このモジュールに必要な3種類の電源のうち34Vのものは電圧に融通がかなりきくだろうと思ったので、どこまで電圧を下げられるか試してみます。

まず下の動画は元とほぼ同じ電圧でモジュールを動かしたときのものです。小音量ですが、かなり電流が流れていることが分かります。デジタルアンプらしからぬ大食いですね。発熱もかなりあります。
ちなみに電源ON時のポップノイズがけっこうひどいです。OFF時は全く無し。



ここからどんどん電圧を下げていくと…


12Vでもちゃんと動作しました。発熱も減っていい感じですよ?
この時9Vを作るのに使っていた三端子レギュレータの動作の都合上、これ以下の電圧では実験しませんでした。
しかしここまで電圧を下げても動くということは、ノートPCなどの適当なACアダプタも幅広く使えるということですから便利ですね(最大出力は当然小さくなりますが)。

さて、1bitアンプモジュールのおおまかな扱い方が分かったところで今回は終わりです。
このモジュールは今後気が向けば適当なケースに入れて使ってみるかもしれませんし、気が向かなければ押し入れの中に放置されることになるでしょう。

2017年6月1日木曜日

SHARPの1bitアンプで遊ぶ(1)

お久しぶりです。

最近、4MHzの発振回路がどうしても発振しないなあと悩んでいたのですが、最終的に4MHzが自分のDMMの測定可能周波数を大きく超えていることに気づきました。DMMのスペックを1ケタ勘違いしていたようです。

で、その発振回路を何に使うかは置いといて、今日は別の話です。

SHARPの1bitデジタルアンプを搭載したミニコンポ(CD再生不可のジャンク)を入手しました。SD-CX9という機種です。

画像の上段がSD-CX9


この1bitデジタルアンプというのはなかなかおもしろいのです。一般的なD級アンプはPWM(パルス幅変調)なのですが、この1bitアンプはその名の通り1bitのPDM(パルス密度変調)を使っています。DSDという音楽ファイルの形式がありますが、あれと同じですね。具体的にはアナログの入力信号の微分値の大きさ(傾き)をパルスの頻度で表すということです。たぶん。
SHARPは1998年に1bitアンプを発表し翌年には発売しましたが、2006年の製品を最後にこの1bitアンプをやめてしまったようです(というか、オーディオ事業自体ほぼやめてしまった)。

ボリューム操作部の"⊿Σ 1BIT TECHNOLOGY"の文字がそそりますね^ ^

さてこの個体、経年劣化のためかCDが読み込めないという故障はありますがアンプとしての機能は正常のようです。早速AUX端子を使って試聴してみました。…が、異常に低域が盛り上がっています。明らかにイコライザがかかっている感じです。いろいろ調べたところ、どうもこの機種で低音ブーストを解除するにはリモコンの操作が必要らしいのですが、残念ながら私が入手した時点でリモコンは失われていました。
このままでは使い物にならないので、とりあえずフタを開けてみましょう。


メイン基板は両面基板でなかなか立派な感じです。この基板の下にCDプレーヤー、MDプレーヤー、ラジオチューナーの各モジュールと電源トランスが隠れています。そして画像右下のシールドされている部分が1bitアンプのモジュールです。
イコライザーはこの1bitモジュールより前の段でかかっているでしょうから、1bitモジュールに直接信号を入れればフラットな特性の出力が得られるだろうと考えました。

そこで1bitモジュールの入力を探って信号を入れてみると…思った通りイコライザの影響は無くなりました。ここでようやく音質評価ができる段階になったわけですが、どうも思ったより良くありません。ユルい、ぬるい音という感じで、封を開けたまま1週間放置したキャラメルコーンを食べた時のような何とも言えない気持ちになります。

ここで1bitアンプに対する興味が失われかけたのですが、まあ参考用にでもと思いもう少し探ってみることにしました。
次回はこのモジュールの特性や回路をすこし調べてみます。