2017年10月29日日曜日

8cmフルレンジユニットでスピーカーを作った

かなり今さら感がありますが、つい先日「これならできる特選スピーカーユニット フォステクス編 (ONTOMO MOOK)」を買ってきました。


フォステクス製のOMF800Pという8cmフルレンジユニットと、ちょっとした冊子が入って定価4,968円。大学の生協で買ったので1割引で4,471円でした。

これを使って早速小さいスピーカーを作ります。今回設定した条件は以下の3つ。
・机の上に置ける程度のサイズ
・製作が簡単
・音がそこそこ良い
これらを考慮して、小型のスリットバスレフに決めました。

まずspedというソフトで簡単なシミュレーションを行います。
結局、長岡鉄男氏のBS-8を参考にしてほぼ同じものを作ることにしました。私のような初心者がいきなりオリジナルですごいものを作ろうとすると大抵失敗するので、真似から始めるのが一番です。
BS-8では14mm厚の板が指定されていますが、そんなものは身近にないので15mmを使うことにしました。このサイズのスピーカーで15mmは割と分厚いほうだと思います(例えばFostexのP-800Eは9mm)。

設計が決まったので、さっそく東急ハンズに買い出しに行きました。台風21号の風雨の中でしたが、思い立ったが吉日というやつです。
910×300×15mmのMDFを購入し、直線カットをやってもらいました。カットは1回につき54円です。

ユニット用の丸穴は、無線部室でボール盤と自在錐を使って開けました。
東急ハンズで丸穴を開けてもらうこともできたのですが、少しでも節約ということで…

ユニットの着脱が繰り返しできるように、板に鬼目ナットを埋め込んでみました。

組立ては木工用ボンドのみで行いました。さすが東急ハンズ、カットの精度はバッチリです。
バスレフポートの出口には、カッターナイフとやすりを使って自分でRを付けました。少々の個体差を気にしてはいけません…

上の画像のところまでできたら、側板をF型クランプで仮どめして試聴します。内部に入れる吸音材の位置と量を調整するためです。

↑試聴中のようす。普段CM5S2を載せているスタンドを使っているので、かなりミスマッチに見えます。

いろいろ試してみた結果、下の画像のように両側面、上面、背面上部に吸音材を配置することにしました。
音の躍動感を損なわず、バスレフ効果を阻害せず、かつ余計な付帯音を出さないように…というのは結構難しいですね。適当なところで妥協してしまいました。
ちなみに、今回使った吸音材はジャンクの既製品スピーカーから抜き取ったものです。

吸音材の調整が済んだらあとは側板をくっつけるだけ!
いちおう完成です。
2~3時間ほど鳴らしてみましたが、なかなか良い感じです。
変な癖は小さいようで、躍動感があって楽しく聞けます。8cmフルレンジ1発ですから低音は出ませんが、ポップスならあまり気になりません(オーケストラなどは当然無理)。
高音に多少キツいところがあります。空間は平面的です。
これからしばらく鳴らしてみて、どう変わっていくか楽しみです。

今回使った材料をまとめてみました。
材料 購入場所 価格
スピーカーユニット 大学生協書籍部 \4,471
スピーカー端子 千石電商 \500くらい?
MDF
910*300*15mm
東急ハンズ
池袋店
\1,917
(うち加工費\594)
M4*10mm 鬼目ナット どこかのホームセンター \200くらい?
M4*15mm ネジ どこかのホームセンター \100くらい?
木工用ボンド ダイソー \108
買い置きがあったものについては価格が曖昧ですが、だいたい7000円くらいで作れたことが分かります。

使った道具は以下の通りです。
道具 今回の用途
ボール盤 穴開け
自在錐 穴開け
F型クランプ 接着時の固定
レンガ 接着時の重し
カッターナイフ R加工
六角レンチ 鬼目ナット取り付け
プラスドライバー ユニット取り付け
紙やすり 仕上げ


このスピーカーの置き場所を考えなければ…

(2017/11/26 追記)
ダイソーの100円水性ニスでサッと塗装しました。
さらに、底に鬼目ナットを埋め込んで仰角を付けられるようにしました。
TDA7492アンプを繋いで鳴らしています。

2017年10月14日土曜日

オーディオ用DACの出力波形を観察する

音源のサンプリング周波数やDACの設定によってDACの出力波形がどのように変化するか気になったので、早速実験で観察してみました。

実験装置の概要図は以下の通りです。

まずパソコンにインストールしたWaveGeneという信号発生フリーソフトで1kHzの矩形波を発生させ、USBケーブルでDAC(Pioneer N-70A(改))に送ります。
DACの出力は0.6mのRCAケーブルで取り出し、そのケーブルを10kΩの抵抗(アンプの入力インピーダンスを想定したもの)で終端します。その抵抗の両端にオシロスコープのプローブ(x10)を取り付けて測定します。
DACの型番末尾の(改)の由来は、出力カップリングコンデンサをバイパスする改造を施してあることです。

1. サンプリング周波数

まずは音源のサンプリング周波数を変えてみました。
音源のビット深度は以下全て16bitで、DACの設定はデジタルフィルターがSHORT, ロックレンジが4, DIRECTモードです。(※24bitも試してみましたが、今回は大きな信号を使っているためか全く違いが出ませんでした。微小信号でテストすれば違いが観測できるかもしれませんが…)

1.1  44.1kHz

Rise Time=29.00us, Overshoot=24.08%
けっこうリンギングが激しいですね。


1.2  96kHz

Rise Time=14.50us, Overshoot=23.55%
リンギングは少し落ち着いて、立ち上がり・立ち下がりが鋭くなりました。
※上の画像(横軸100us/div)ではRise Timeが読めないので、横軸を20us/divに変えて表示された値を記しました。以下同じ


1.3  192kHz

Rise Time=7.300us, Overshoot=21.68%
ますます理想の矩形波に近づいています。


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2. デジタルフィルター

N-70Aでは、3種類のデジタルフィルターを選ぶことができます。
N-70AのDAC IC(ES9016)のデータシートは公開されておらず、それぞれのフィルターがどんな特性になっているのかはよく分かりません。
というわけで、このデジタルフィルターを変えて波形を見てみましょう。
サンプリング周波数は44.1kHzに戻します。

2.1 SHORT(これまでと同じ)

Rise Time=29.00us, Overshoot=24.08%
矩形波をアナログのDCアンプに通したような自然な波形です。17kHz(多分)のリンギングがあります。


2.2 SHARP

Rise Time=8.600us, Overshoot=15.61%
21次の高調波(21kHz)がはっきり見えています。それより上の周波数はスパッと"SHARP"に切られているようです。立ち上がりはSHORTよりも大分速いですね。


2.3 SLOW

Rise Time=7.800us, Overshoot=12.33%
リンギングが少なく、立ち上がりは最も速いです。
SLOWというのはフィルタの特性がなだらかという意味なんでしょうね。

---〈試聴〉---
この実験のあとで、改めて3種類のフィルタを切り替えながら比較試聴をしてみました。
音源はNASに保存したNorah Jonesの"It's A Wonderful Time For Love"(44.1kHz 16bit)で、設定はDIRECTモード・ロックレンジ2としました。
SLOWは柔らかくやさしい音、SHARPはガッチリと芯がある硬質な音、SHORTが最も特徴のない音に聞こえました。試聴の感想が波形を見て受けた印象と違っていておもしろいです。
何度か聞き比べをしていたら、画面を見ず適当にリモコンでフィルターを変えてから聴いてもどのフィルタを使っているかわかるようになりました。
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3. アップサンプリング

最後に、アップサンプリングを試してみます。「最大384kHzまでサンプリングレートをアップさせることができる」機能だそうです。

3.1 アップサンプリングON

Rise Time=18.50us, Overshoot=13.28%
比較対象は2.1の画像です。
このときのフィルターはSHORTなのですが、SHARPを選択した時と似た波形になりました。
19次の高調波(19kHz)が見えています。

---〈試聴〉---
上と同じ音源、ロックレンジ4・SHORTフィルターでアップサンプリングの有無の比較試聴をしました。
アップサンプリングをONにすると多少音がおとなしくなったような印象を受けました。
波形からはSHARPフィルターと似た音が予想されましたが、またしても違う感想になりました。まあ、試聴の感想には機器以外の要素(筆者の体調など)も関係してくるので話半分に読んでください。

ちなみに、デジタルフィルター試聴時と同じロックレンジ2のままでアップサンプリングを使うと音がブツブツ途切れました。アップサンプリングを使うためにロックレンジを大きくする必要がある(=音がボケる)というのは残念であり、それだけでアップサンプリングを使う意義が薄れてしまう気がします。
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さて、実験はこれで終わりです。
サンプリング周波数による波形の違いは大体予想通りでした。
一方、意外に思ったのは、波形の立ち上がりが最も速いSLOWフィルターの音が柔らかく聞こえたことです。聴感上の立ち上がりの速さと波形の立ち上がりの速さは別物なのでしょうか。

今回は矩形波だけでしたが、インパルスを与えて出力波形を見てもおもしろいかもしれません。


2017/10/15 コメントを受けて、bit深度の影響とアップサンプリング使用時の試聴結果について加筆

2017年10月3日火曜日

オシロスコープを買った

RIGOLのオシロスコープ DS1054Zを購入しました。amazonで52,461円。定番機種なので、詳しいスペック等は省略します...



メーカー名が大書された箱で届きました。梱包はしっかりしています。
真新しい電子機器特有のにおいがたまりません。



プローブ4本、電源ケーブル、USBケーブル、取扱説明書(英語・中国語)が付属していました。ちなみに、この説明書に載っているのは基礎的な使い方だけです。詳しい取扱説明書はweb上にあります(日本語)。

見た目や操作感のチープさもあまり無く、良い感じです。
早速プローブを校正しました。




カラー画面のおかげで、今まで使っていた無線部室のTektronix TDS320よりもかなり使いやすいように感じます。
それに、薄っぺらで(奥行き12.2cm)、軽い(3kg)のも嬉しいところです。机に置いても邪魔にならず、持ち運びも楽々。

オシロ本体にUSBメモリをさして、ボタンひとつで画面キャプチャできるのにも感動…

もう布をかぶってオシロの画面を撮影する手間ともおさらばです。

届いてから10日ほどですが、このオシロのおかげで早速電子工作がはかどっています。
まだ使っていない機能もたくさんあるので、ぼちぼち慣れていこうと思います。あの有名な性能アップの裏技は試していません。

2018年1月17日追記
もうオシロなしでの電子工作など考えられない体になってしまいました。

2017年10月1日日曜日

aitendoのジャンクDSPラジオ

9月27日、あると思っていた講義が無かったので秋葉原に行ってきました。
開店直後のaitendoに行くと…



1階の外で展示見本品と開発実験機の処分セールをやっていました。
しばらく漁って、この2つをゲットしました。


aitendoの定番キットであるDSPラジオ、DSP9620(紫の基板)とK-6955V2D(緑の基板)の完成品です。なんと1個108円!こんな破格の値段で売っているからにはどうせ動作しないんだろう…と思いましたが、動作するor修理できるという可能性に賭けて買ってみました。

で、帰って試してみると案の定2台とも正常には動作しませんでした。
緑基板のほうはロータリーエンコーダを回しても周波数が変わらず画面表示もおかしい状態、紫基板のほうは全ての操作を受けつけない状態でした。

やはりダメか、部品取りにするか…と思いつつ、まずは緑基板ラジオをあちこちいじっていたら、基板に力を加えると時々正常に動作することに気づきました。
さてはどこかのハンダ不良か、とルーペで調べてみると、ICが怪しいようでした。

0.65mmピッチのAKC6955というICです。特に1~12pinのハンダ付けがうまくできていないように見えたので、0.3mmのハンダを使って修正しました。
さらに、もうひとつのIC(MC96F6432Qというマイコン; 0.8mmピッチ)のハンダ付けもダメそうだったので同じく修正しました。
なんと、これだけでちゃんと動作するようになりました。やったぜ。


FMはなかなか感度が高いようで、アンテナを繋がなくてもけっこう入感します。
しかし、中波はなんとアメリカ仕様の10kHzステップであり日本ではほとんどまともに使えないでしょう…と思っていたら、中波受信中にMWボタンを押すと9kHzステップに変更できることがちょうど今分かりました。問題なく受信できているようです。



短波も聞けるようですがまだ試していません。

最後に注意点をひとつ…このラジオは0.5Wのオーディオアンプを内蔵しているのですが、基板左に付いているミニジャックの出力はDCカットされていないので直接イヤホンやスピーカーを繋ぐのはNGです。
1000uFのコンデンサを挟んで小さなスピーカーを繋いでみましたがなかなか良い感じでした。

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さて紫基板のラジオについても調べてみたところ、2つある水晶発振子のうち1つが発振していないことが分かったので、こちらもそのうち修理してみたいと思います。