2019年12月13日金曜日

電流帰還パワーアンプの製作 (2) 周辺回路

前回の記事ではパワーアンプの回路を紹介しました。
今回は電源やスピーカー保護などの周辺回路を紹介します。

【電源】

18V 3A×2回路のトランスが偶然余っていたので、これを使って伝統的なトランス式の電源を作りました。ショットキーバリアダイオードブリッジを2個使って正負別に整流し、3300μF×14(計46200μF)の電解コンデンサアレーで平滑します。無負荷時の出力電圧は±25V程度になりました。



秋月電子で1個50円の激安電解コンデンサを使ったので、容量のわりに安上がりでした。基板の両面にコンデンサを実装することで面積を削減しています。

コンデンサの容量がこれだけ大きいと電源を入れたときの突入電流が心配なので、突入電流抑制回路を取り付けることにしました。電源投入直後は47Ωの抵抗を通じてコンデンサを充電し、しばらく後にマイコン制御のリレーで抵抗をバイパスするという回路です。
電源の2次側にあまり余計なものを入れたくなかったので、1次側に付けてみました。


電流制限用の47Ω抵抗には10Wのセメント抵抗を用いており、電源投入時には瞬間的に定格を超えることが予想されますが、まあ大丈夫だと思います(アマチュア特有のガバガバ設計)。リレーがONしてからは、抵抗での電力消費はほぼゼロになるはずです。
リレーは本来1回路で良いのですが、偶然2回路品の手持ちがあったので、ON時の接触抵抗を少しでも小さくしようと接点を並列にして使ってみました。ちなみに、リレーの接点を並列にしても開閉容量を2倍にはできないので要注意です(参考: オムロン, リレー接点を2個、並列に接続すると開閉容量は2倍になりますか?
 https://www.fa.omron.co.jp/guide/faq/detail/faq02765.html)。

【スピーカー保護回路】

アンプの故障で出力に大きなDC電圧が出てしまったときにスピーカーをアンプから切り離す回路が必要です。DC検出にはTA7317PやμPC1237HAなどのICを使う手もありますが、今回は少し違う方法を取ってみました。


アンプの出力に適当なCRでLPFをかけたあと、両極性型フォトカプラに入力します。アンプの出力にDCが出てくるとフォトカプラ内のLEDに電流が流れ、回路図中のDC_detect端子の電圧が下がります。
簡単かつ確実な回路で、入出力が絶縁されているのでBTLのアンプにも使いやすいです。フォトカプラの出力をさらにトランジスタで受けてリレーを駆動することもできると思いますが、今回はそうはせず、マイコンでDC_detect端子の電圧を見てリレーを制御します。
スピーカー保護リレーには、機械式リレーではなくMOS FETリレーを使いました。


MOS FETリレーの詳細については以前の記事(スピーカー保護用MOS FETリレーの製作と実験)を参照してください。

【マイコン】

Arduino Pro miniの中華互換品を使ってみました。1個300円ほどで買える便利なマイコンボードです。


このマイコンでは以下のような制御を行います。

  • アンプ出力のDC検出

上で紹介したフォトカプラによる検出回路の出力を監視します。デジタル入力ではなくアナログ入力(ADC)を使うことで、小さなDCオフセットも検出できます。

  • アンプ出力リレーの制御

電源を入れてから3秒後にONします。アンプ出力に異常なDCが検出された場合は即座にOFFして、再度電源を入れなおすまではONしません。

  • 電源の突入電流制限リレーの制御

電源を入れてから1秒後にONします。

  • パイロットランプの制御

正常動作時は点灯、ミュート時は低速点滅、異常検出時は高速点滅します。

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次回はアンプ基板と今回紹介した周辺回路をケースに組み込んでちょっとした測定を行います。

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