必要な条件は
① 約20V入力、15V出力
② 最大20mA程度の出力電流
電源の性能の指標はいろいろありますが、オーディオのプリアンプ用としてはどんな点を重視すべきでしょうか。必要な性能を意識しないと迷走しそうです。
例えば…今回は電圧がぴったり15Vである必要はありません。出力電圧が多少の温度特性を持っていても問題ないと思います。また、今回のプリアンプは電流の変動がほとんどないので、大きな負荷変動に対応する能力もほどほどで良さそうです。
逆に、商用電源のリプルが大きく残ったり電源回路自体が発振状態であったりすると当然まずいですね。電源自身が発するノイズが多いのも好ましくありません。
このような基本性能を確保しておけば、あとは好みで判断ということになります。
78/79シリーズの三端子レギュレータは簡単ですが、性能も音もあまり良くないし何より面白くないのでまず候補から外します。
本当はいろいろな電源回路を作ってみて比較すればよいのですが、そこまでの根気も時間もないので、音が良いとしてネット上で紹介されている回路やいろいろなメーカー製アンプの回路を調べ、LTspiceで様々なシミュレーションをやってみました。
今回検討した回路をいくつか紹介します。必要な電圧・電流や重視する特性によって最適な定数は違うので、ここではあえて定数を載せません。
・よくある無帰還電源
自作アンプでもメーカー製アンプでもよく使われているタイプです。出力インピーダンス等の性能はあまり良くないですが、音には定評があるようです。
・オペアンプを使った電源
「定本 トランジスタ回路の設計」で低雑音出力の電源として紹介されており(第10章の図18)、高級なメーカー製アンプの回路図でも時々見かけるタイプです。リプル除去率・出力インピーダンスなどの性能はピカイチですが、定数の設定によっては不安定になりやすいようです。
高性能のポイントはオペアンプの電源を安定化後の部分から取っていること。下の図は某Tブランドの30年ほど前のプリアンプの電源回路ですが、やはりオペアンプの電源が安定化されていて根本的には上の回路と似たものです(回路図の流れが右から左になっていることに注意)。
・「通電してみんべ」さんの電源
自作オーディオ界隈で有名なブログ「通電してみんべ」にてよく採用されている電源回路。絶対的な性能こそ上のオペアンプ電源に負けるものの、素直な特性と安定性が特長です。
部品点数が少ないのも良いですね。
・某Y社のアンプの電源
某メーカーが好んで採用しているシャントレギュレータです。性能は定電流回路に大きく左右されますが、高い周波数まで素直な特性です。
・某L社のアンプの電源(おまけ)
1980年代のプリアンプに使われていた回路です。
部品点数が多くて面倒なので検討しませんでしたが、ディスクリートで差動増幅を組むという気合の入ったものです。
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これら様々な回路について検討した結果、「通電してみんべ」さんで紹介されている回路を使うことに決めました(シャントレギュレータと迷った)。出力に大容量の電解コンデンサを入れなくても広帯域で低い出力インピーダンスを実現でき、安定性も高そうで作りやすいです。
具体的には下のような回路にしました。
2mAのCRDを使わず1mAのものを並列にしているのは定電流特性をよくするため…というのは後付けの理由で、本当は1mA 1本で製作してから追加したためです。
ノイズを減らし温度特性をよくするため、15V程度のツェナーダイオードを使わず4.7Vを3直列にしています。ツェナーダイオードの電圧+Q7のVbeが出力電圧になります。
数百kHz以上でインピーダンスがどんどん下がっているのは出力コンデンサの性質によるものです。この辺は使うコンデンサの種類によるので、実際どうなっているか正確には分かりません。
また、出力のトランジスタは主にコレクタ損失とコレクタ電流に気を付けて選ぶ必要があります。今回はごくごく小電流なので2SC2240で十分です。
さて、このレギュレータは部品点数が少ないので、ちょっとがんばって三端子化してみました。基板上のレイアウトの自由度を確保しつつ、レギュレータを負荷の直近に配置するためです。
※この段階ではまだCRDが1本です。
上の画像の右側が試作品、左側がアンプに使う小型化改良版です。両面ノンスルーホール基板を3×3穴に切って使い、両面を使ってなんとか全ての部品を詰め込みました。出力コンデンサはさすがに外付けですが。
+15V出力と-15V出力のものを2つずつ作って並べてみました。またしても一番右は試作品です。
ブレッドボードで安定に動作することも確認しました。今回のプリアンプではこれを採用することにします。
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