2020年5月9日土曜日

KT0915 名刺サイズDSPラジオの製作 (2) 回路

KT0915を使った名刺サイズラジオシリーズ第2回、回路について。


まず全体の回路図です。分かりやすいように少し説明を入れてみました(クリックで拡大)。


この回路図のオリジナルサイズの画像はこちらのリンクへ(※巨大な画像が開きます)。

ブロックごとに解説していきます。

① 電源



電源は単4電池×3本あるいはUSB microB端子からの供給です。USB電源にはチップフェライトビーズでノイズ対策をしています。LiPoバッテリーも検討しましたが、事故が怖いのでやめました。
SW6は電源供給元を切り替えるスイッチです。部品共通化のためDPDTスイッチになっていますが、本来はSPDTで構いません。

次の電源ON/OFF制御は少しおもしろい動作をする部分です。まず、電源を入れるときの動作から説明します。
Q2のAO3415AはPch MOSFETで、VGS -1Vくらいからドレイン電流が流れ始めるという低電圧駆動が特徴の素子です。ラジオの電源が切れている間はR3によってQ2のゲートがプルアップされているため後段の回路への電源供給は遮断されています。ここで電源スイッチ(SW7)を押すとQ2のゲートの電圧は電源電圧をR3とR7で分圧した値まで下がり、Q2がONして回路に電源が供給されマイコンが起動します。マイコンは起動から1.5秒間は何もせずに待ち、その後PWR_CTRL端子をHIGHにします。するとQ1の2N7002(Nch MOSFET)がONしてQ2のゲートを下に引っ張るので、SW7を開放しても電源供給は継続されます。こうして、「電源スイッチ長押しでスイッチON」を実現しています。
次に、電源を切るときの動作です。SW7を押すと、POWER_DET端子に電源電圧をR3, R16, R7で分圧した電圧が出てきます。この電圧をマイコンのADCで読み(デジタル入力だとスレッショルドを超えてくれない)、SW7の押下を検出します。SW7が約2.5秒間押されたままになっていると「電源を切るつもりがある」と判断し、受信中の周波数などのデータをEEPROMに保存します。保存し終わったらPWR_CTRL端子にLOWを出力します。ここでSW7を離すと、Q2のゲートはプルアップされ電源供給が遮断されます。このようにして「電源スイッチ長押しでスイッチOFF」を実現しています。

オルタネートのスイッチで物理的に電源をON/OFFすると電源を切るときに設定をEEPROMに保存する時間が取れませんし、電源を完全にマイコン制御するとマイコンのバックアップのため電源OFF時でも常に電流を消費することになるため、このようにハードとソフトを組み合わせた電源制御を考えてみたというお話でした。DSPラジオは基本的にICを適当に繋ぐだけで動いてしまうので、回路の面ではこの電源制御がハイライトかもしれません。

3.3Vレギュレータはノイズ対策としてラジオIC用とマイコン・LCD用の2系統にしました。そこそこローノイズで安いNJM2863を使用しました。


② マイコン・LCD


マイコンはATmega328P-AUです。消費電力を減らすため水晶は使わず、内蔵CR発振器で8MHz動作させています。このマイコンにArduinoのブートローダーをあらかじめ入れておいてUARTでスケッチ(プログラム)の書き込みを行うようになっていますが、この方式はお勧めできません。というのも、内蔵CR発振器の周波数の誤差のせいでUARTの通信ができない個体がたまにあるらしいからです。内蔵発振器を使う場合、プログラムはICSPで書き込むのが良さそうです。今回は運よく内蔵発振器の精度が良いものに当たったようで、この回路でもすんなり使えましたが…

LCDには、バックライト付き8文字2段のAQM0802A-FLW-GBWを使いました。バックライトはMOSFETを通じたマイコン制御になっています。この回路ではバックライトに流れる電流は5mA程度なので、マイコンから直接制御することもできたと思います。


③ DSPラジオICとその入出力


KT0915は水晶さえ繋げばとりあえず動いてくれるので楽なICです。受信周波数などはマイコンからI2Cで制御していますが、音量制御だけKT0915にボリュームを取り付けておこなっています。本当はこれもI2Cで制御できるのですが、部品配置の都合で可変抵抗からマイコンまでの配線をうまく通せなかったというショボすぎる理由のためこうなってしまいました。

今回は、本格的なBCLにも使えるようにFMと中短波それぞれに専用の外部アンテナ端子(3.5mm ミニジャック)を付けてみました。手中短波用のアンテナは手動切替(バーアンテナ/外部アンテナ)です。スイッチ付きジャックの使用によりFMのアンテナは自動切替(イヤホンアンテナ/外部アンテナ)になっています。

オーディオ出力はイヤホンとスピーカーの2通りを備えています。イヤホン出力はKT0915の出力にDCカットと保護抵抗を入れただけです。イヤホンジャックは4極端子で、1極は挿抜検知用です。イヤホンをさすとスピーカー駆動用のICが自動的にシャットダウンされて消費電流を3mAほど節約できます。イヤホンをFMのアンテナとして使うために、イヤホンジャックのスリーブ端子とGNDの間にはフェライトビーズが入っています。
スピーカー用にはHT82V739というアンプIC を使っています。これは出力が差動で、DCカット用に大きなコンデンサを付ける必要がないのがうれしいところです。イヤホン出力はFMステレオに対応していますがスピーカーはモノラルなので、アンプICの手前で左右の音声信号を混合しています。







2 件のコメント:

  1. 是非とも作ってみたいのですが、基板とかROMは配布される予定ですか?

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    1. koolさん
      具体的な予定はありませんが、現在このラジオの改良版を設計しているので、それがうまくいけば頒布してみたいと思っています。

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